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John ReisとRick Froberg、サンディエゴ音楽シーンの足跡 3: SultansとHot Snakes、ObitsとNight Marchers

Footsteps of the San Diego Music Scene 3: 2000-2016

 

サンディエゴを代表するバンドとして90年代前半のシーンを牽引したDrive Like JehuとRocket From The Crypt。しかしDLJは自然消滅的に活動を停止し、一方のRFTCもメジャー・レーベルとの契約解除を機にドラマーのAtomが脱退。2000年代に入ると同時に、活動停止を余儀なくされてしまう。

しかし多作で知られるJohnの音楽的熱意は、決して冷めることはなかった。彼は自身のレーベルであるSwami Recordsを運営する傍ら、二つのサイド・プロジェクトを立ち上げるのだった。

 

2000年: Sultans、そしてHot Snakes結成

一つは海賊風のコンセプトを持つ3ピース・バンド、Sultans。かつてのRFTCがそうであったように、どこでも気軽に演奏できるスタイルを想定しており、メンバーにはBlack FlameことRFTCのギタリストであるND、そしてThe Adolescentsのメンバーも在籍したUnsoundというバンドでドラムを叩いていたTony Di PrimaことTony Brownが参加。自身はSlasherという変名を名乗り、ベース・ボーカルを担当している。

2000年にはJohnが新たに立ち上げたDrag Racist Studioにて、最低限の機材を用いてレコーディングした1stアルバム『Ghost Ship』をSwami Recordsからリリース。MisfitsやReal Kids、Killed By Deathのコンピ・シリーズを意識したという、ストレートでシンプルなパンク・サウンドが炸裂する勢い溢れる内容になっている。

 

Sultans at Bar Pink 2012

 

あくまでサイド・プロジェクトではあるものの、その楽曲はキャッチーな魅力に溢れており、意外なところではマサチューセッツゴシック・メタルコア・バンド、Convergeのギタリスト兼プロデューサーのKurt BallouもSultansの名を例に挙げ、Johnが関わるバンドのファンであることを公言している。

バンドはその後も断続的に活動を継続。2003年にはギターのNDに代わりJohnの実弟、Dean ReisがBlack Velvet名義でベーシストとして加入。Johnも楽器をギターに持ち替え、翌2004年にはよりブルージーになった2ndアルバム『Shipwrecked』を発表する。2007年には一度活動を停止しているが、2010年のハロウィーンにはJohn、ND、Dean、Tonyの4人で復活ライブを披露。以降も散発的にライブを行なっている。

 

Sultans with El Vez at Bar Pink 2019

 

そしてもう一つのプロジェクトが、盟友Rickと三たびタッグを組むことになるバンド、Hot Snakesである。

そもそもの始まりはJohnとドラマーのJsinclairことJason Kourkunisによるセッションだった。現在では地元フィラデルフィアのサイケ・バンド、Bardo Pondでも活動するJasonは、Touch & GoやKill Rock StarsおよびDischordから作品をリリースしたR&Bパンク・バンド、Delta 72の元メンバー。拠点は違えどバンドでの共演を通じて親交のあった二人は曲作りを開始。エンジニアにはその後もバンドの全作品を担当することになるBen Moore(ミュージシャンとしてもThe Styletonesというソウル・バンドで活動)を迎え、サンディエゴのBig Fish Recordingにてレコーディングを進めていく。

 

Delta 72 - It's Alright

 

そうしてできた音源をJohnがニューヨークのRickに聴かせたことから、かつてのコンビが再び復活することになるのである。音源をいたく気に入ったRickは、バンドへの参加を即決。彼のギターとボーカルが加わり、バンド自ら「Down-stroke Warlords(ダウンストロークの将軍たち)」と形容するアンサンブルが完成する。

バンド名は排泄物の比喩と思われることも多いそうだが、実際にはJohnの祖父が台湾で見かけたという蛇料理専門店の看板に着想を得て名付けられた。

 

レコーディングにはJasonと同じく元Delta 72およびCupid Car Clubのメンバーで、Rickがアルバに客演もしたSkull Kontrolの女性ベーシスト、Kim Thompsonもコーラスでゲスト参加。そして2000年、伝説的コンビの復帰作となる1stアルバム『Automatic Midnight』がSwamiからリリースされる。

ベースレスで製作された本作ではJohnの弾くSuicide風のキーボードがその役割を担うと共に、彼らのオールタイム・フェイバリットの一つであったWipersの影響が顕著に現れたキレのあるギター・ワーク、そしてこれまで以上にテンションと勢いを増しながらもメロディアスで表現力豊かになったRickのボーカルが炸裂。RFTCとDelta 72の熱血ガレージ・サウンドを下敷きに、Drive Like Jehuの複雑なポスト・ハードコアをコンパクトに合理化したようなスマートかつエネルギッシュなR&Rを確立している。

 

Hot Snakes - Automatic Midnight Unreleased Tracks

 

2001年: Rocket From The Crypt再始動

一方で停滞中だったRFTCもLAのポップ・パンク系インディー・レーベル、Vagrant Recordsとの契約が決定する。2000年には移籍後第一弾リリースとして、レーベル・メイトとなったGet Up Kidsとのスプリット7インチを発表。そして旧知の中であるSuperchunkのJon Wursterをサポート・ドラマーに迎え、ニュー・アルバムの制作をスタートさせる。

プロダクションにはDLJのMark TrombinoやDonnell Cameronという常連組に加え、The White StripesCat Powerとの仕事で知られるStuart Sikesも参加。そしてLAやメンフィスでレコーディングが進められる中、ついに正式メンバーとして新ドラマーが加入する。

 

隻腕(という設定)のドラマー、Ruby Mars。その正体はサンディエゴ出身のプロ・スケーターにして、現在はヘビー・サイケデリックインストゥルメンタル・トリオ、Earthlessのドラマーとしても活動するミュージシャン、Mario Rubalcaba。

ロディック・ハードコア・バンドの411に始まり、Final ConflictメンバーらとのChicano-Christ、そして2024年にまさかの再結成を果たしたカオティック・ハードコア・バンド、Clikatat Ikatowi。さらにはRob CrowのThingyにも参加するなど、数々のバンドで地元シーンを渡り歩いてきたMarioだったが、当時はシカゴへと移住してSea of Tombsで活動中。しばらくサンディエゴを離れていたため、AtomがRFTCを脱退したことも知らなかったそうだ。しかしThe Black Heart Processionのレコーディングに参加したのが縁で、Pall Jenkinsを介してRFTCメンバーと接触。デモを聴いて参加したリハーサル・セッションに大きな手応えを感じたことから、サンディエゴへの帰郷とバンドへの加入を決断する。

 

Clikatat Ikatowi - Too Simple

 

新たなレーベルと強力なドラマー。いよいよ新体制の整ったバンドは、60年代における日本のGSをヒントに名付けられた6thアルバム、その名も『Group Sounds』を2001年に発表。タイトルが示すとおり、バンドの結束力を感じさせるハイ・エナジーな大傑作でシーンへの復帰を見事に果たす。

なおリリース直後のツアーには、Circle Jerksおよび初期Black FlagのボーカリストであるKeith Morrisも来訪。それがきっかけで後にMarioはKeithの新バンド、OFF!に参加することになる。また、Marioはサンディエゴへ戻ったことによって知り合ったメンバーとEarthlessを結成。さらにはJohnの実弟Deanらと共に、自らギターやボーカルを務めるMannekin PissおよびSpider Feverというサイド・プロジェクトも始動。一時期はSultansでもTonyに代わってプレイするなど、Johnに負けず劣らずの多忙ぶりを発揮している。

 

RFTC 04/15/01 at Middle East Cambridge, MA 04/15/01

 

一方でサイド・プロジェクトと思われたHot Snakesも、ツアーを行うに当たりベーシストを迎え入れたことでバンド形態化。次第に活動を本格化させていく。

加わったのはFishwifeやTanner、Beehive & The Barracudasなどで活動し、古くからRFTCのレコーディングにも携わるなどJohnやRickとも親交の深いGar Wood。彼の加入によって完全なるバンド形態となり、2002年にはより理知的なサウンドとなった名作2ndアルバム『Suicide Invoice』を発表する。かつて彼らのバンド名から名前を「盗んだ」サイト、『Pitchfork Media』も8.8点を付けるなど高評価を獲得。以降バンドは、かつてのDrive Like Jehuと同様、RFTCと同時進行で活動することとなる。

 

するとRFTCも同年、これまで以上にガレージ・パンク色の強い7thアルバム『Live From Camp X-Ray』をVagrantよりリリースする。題名のキャンプ・エックスレイとは9.11直後にジョージ・ブッシュ政権下で設立され、過酷な拘留実態で問題となったアメリカ海軍グアンタナモ湾基地内の強制収容所のこと。

ライブ・アルバムと思われがちだが、Drag Racist StudioにてJohn自身のプロデュースにより録音されたスタジオ・アルバムで、ミックスはBen Moore、ライナー・ノーツはSympathy For The Record IndustryのLong Gone Johnが担当。アルバム・タイトルには、当時のアメリカ政府や国内の空気に対する強い批判と怒りが込められている。

 

RFTC - I Can't Feel My Head

 

続く2003年にはSympathy For The Record Industryより、Jon Wursterとのセッション時に録音されたEP『On The Prowl / Come On』(後にSympathy For The Record Industryからの作品をまとめた2007年の編集版CD『The Name Of The Band Is Rocket From The Crypt』にも収録)をリリース。

さらに同年、John、Andy、Marioの3人は70年代ニューヨーク・パンクのレジェンドで、Swami Recordsが音源のリイシューも手掛けたTestorsのSonny Vincentと共にスタジオ入り。共作アルバムとなる『Sonny Vincent With Members Of Rocket From The Crypt』を作成している。なおこの作品は諸般の事情により2009年までリリースされなかったものの、2015年には名義をSonny Vincent & ROCKET FROM THE CRYPTと改め、楽曲を追加した再ミックス盤『Vintage Piss』も発売された。

また、惜しくも2021年3月に39歳の若さで亡くなったアラバマ出身のロックンロール・シンガー、Dan Sartainが同じく2003年にSwamiからリリースした『Dan Sartain V.s The Serpientes』には、RFTCメンバーやGar Wood、Dean Reis、Dustin Milsapら周辺人物がこぞって参加。バックでさまざまな楽器を演奏している。

 

Sonny Vincent with RFTC

 

一方、サイド・プロジェクトの域を超えつつあったHot Snakesだったが、Jasonが自身の拠点であるフィラデルフィアで加入したバンド、Burning Brides(ギター・ボーカルのDimitri Coatsは後にMarioと共にOFF!に参加)の活動に専念するためグループを離れることになってしまう。しかし後任のドラムとして、RFTCのMarioが両バンドを兼務する形で正式加入。2004年には、よりアグレッシブになった3rdアルバム『Audit In Progress』をリリースする。

なおシカゴを代表するポスト・ロック・バンド、TortoiseのベーシストであるDoug McCombsは、このアルバムを自身のフェイバリットに挙げ、Johnのギター・プレイを「リフの天才」と称えている。また、収録曲の「This Mystic Decade」は後の2013年に、アメリカ史上最高本数を売り上げたビデオ・ゲーム『Grand Theft Auto V』内のサウンドトラックにも使用された。

 

Hot Snakes - Braintrust

 

2005年: Hot SnakesとRocket From The Cryptの解散

『Audit In Progress』リリース後はツアーも積極的に行い、イギリスではBBCラジオの伝説的DJ、John Peelの番組でスタジオ・ライブも披露。その後ほどなくしてJohn Peelが亡くなったため、Hot Snakesのパフォーマンスが長い歴史を持つ番組の最後を飾るセッションとなった。この時のライブ音源はEP『Peel Sessions』として翌2005年にSwamiよりリリースされている。

さらに2005年のツアーではオーストラリアのラジオ局JJJでもスタジオ・ライブを披露。こちらも後にライブ・アルバム『Thunder Down Under』として、同じくSwamiから2006年に作品化された。

 

Hot Snakes - Lax for Triple J

 

しかし順調に思われたHot Snakesの活動だったが、実はこのツアー中、バンドは既に解散を決意していたそう。アメリカ帰国後の2005年5月、Swami Recordsのサイト上にてバンドの活動終了が発表されたのだった。

バンドは同年の秋、プロ・スケーターのTony Hawkをフィーチャーしたビデオ・ゲーム『Tony Hawk's American Wasteland』のサウンド・トラックに楽曲を提供。DCハードコアの雄、Government Issueのカバー「Time to Escape」が収録され、これが解散前に手掛けた最後の曲となった。

 

Hot Snakes - Time to Escape 2012

 

するとその直後には、なんとRFTCも同年のハロウィン・ライブを最後に解散することが発表される。詳しい経緯までは語られていないが、メンバーそれぞれの事情から、かつてのようにバンドに時間を割けなくなったことが解散の一因であったようだ。

地元サンディエゴのホテル、Westin Horton PlazaのGrand Ballroomで開かれた解散ライブには、遠方からの観客のために宿泊プランも用意され、早々にチケットは完売。Elvis Presleyのオマージュ・シンガーである元The ZerosのEl Vezが司会を務め、仮装姿のメンバーによって盛大に執り行なわれた「葬儀」には、かつてバンドと共に演奏したSuperchunkのJon WursterやNo KnifeのChris Prescottといったゲストも参列。イベントの様子はカメラにも収められ、2006年にはラフ・カット版DVD『RFTC 10-31-05』がSwami Recordsで限定販売される。その後ビデオ制作会社の火災事故により完成が遅れるものの、2008年にはCDとDVDがセットになった完全版ライブ・アルバム『R.I.P.』がVagrantから正式にリリースされた。

 

RFTC - I'm Not Invisible from RIP DVD

 

こうして二つのバンドがほぼ同時になくなったことにより、彼らの多忙すぎる音楽活動に、ついに終止符が打たれたのである。

と思いきや、彼らの音楽的情熱は決して衰えたわけではなかった。二人は再び新たなプロジェクトを始動させるのである。

 

2006〜2007年: ObitsとThe Night Marchersの誕生

Rickは2006年、拠点であるブルックリンで自身がギター・ボーカルを務める新バンド、Obitsを結成する。

タッグを組んだのは、同じくFunny Garbageでグラフィックおよびサウンド・デザイナーとしても働いていたというSohrab Habibion。JawboxとのスプリットやJade Treeからのリリースでも知られるワシントンDCのポスト・ハードコア・バンド、Edselのシンガー兼ギタリストであった彼は、ニューヨークへ移住後、共通の知人を介してRickと出会う。音楽や絵画など共通点の多い二人は自然と仲良くなり、一緒にセッションを行うようになったそうだ。

バンドには同じくDCのカントリー・ロック・バンド、Shortstackの元メンバーで、Rickの友人であったScott Gurskyらが参加。曲作りとリハーサル期間を経て2008年1月にニューヨークのライブハウス、Cake Shopで初ライブを行う。

 

すると、その際に録音されたブート音源がネット上に流出。これを受け、バンド自身もMySpaceへ公式音源をアップしたのがきっかけとなり、関心を示したSub Popとの契約が決定する。

以降、元EdselのGeoff SanoffとGirls Against BoysのEli Janneyをプロデューサーに、2009年には1stアルバム『I Blame You』、2011年には2ndアルバム『Moody, Standard And Poor』をリリース。その後Scottの脱退により、新ドラマーとしてSoulsideおよびGirls Against Boys、さらにはBelliniでも活動するAlexis Fleisigが加入し、2013年には3rdアルバム『Bed & Bugs』と、コンスタントに作品を発表していく。

 

Obits Live on KEXP

 

そして2014年には、MatadorやTouch and Goに作品を残した元Silkworm(およびPavementStephen Malkmusを加えたThe Crust Brothersや後のBottomless Pit)のTim Midyettを伴い、東京および大阪での来日ライブも実現。Rickがカバー・アートを提供しているDiscotortionらと共演し、来日記念CDとしてシングル・コンピ『L.E.G.I.T.』もリリースされた。

ちなみに当時SNSを一切利用していなかった筆者はツアーが終わった数日後まで来日公演に気づかず……(泣)。結局はこれがRickのキャリアにおける唯一の来日となり、とうとう生で彼の歌声を聴くことは叶わなくなってしまいました。

 

翌2015年、バンドは突然の解散を発表。SohrabとベースのGreg Simpsonは新たに、Holy FuckなどでドラムをプレイするMatt Schulzらと共にSAVAKを結成する。しかしRickとの関係も良好なようで、2016年リリースの1stアルバム『Best Of Luck In Future Endeavors』では彼がアートワークを担当。バンドは2024年現在も活動を続けている。

なおObitsは解散から6年後の2021年に、オーストラリアのブリスベンで録音された2012年のライブ音源を『Die At The Zoo』と題してNYのOuter Battery Recordsからリリースする。しかしこれは再結成などを意図した作品ではなく、バンドとしては完全に活動を終えている。

 

一方のJohnはSwami Recordsの運営や地元ラジオ局KBZT(後にストリーミング・サイト、liveoneへ移行)での音楽プログラム『Swami Sound System』のホスト、友人たちと共同でオープンしたBar Pink Elephant(後にBar Pinkと改名)の経営、そしてTigerと名付けられた息子の子育てに専念。彼にしては珍しく、しばらくの間バンド活動から離れている。

しかし2007年、真夜中に行進するハワイの幽霊伝説に因んで名付けられた新バンド、The Night Marchersを結成し、音楽活動を再開させる。メンバーにはドラムにJason、ギターにGarという元Hot Snakesメンバーに加え、カナダからサンディエゴへ移住した元CPC GangbangsのTommy Kitsosがベースで参加。火災で焼失したというDrag Racist Studioに変わり、Johnが新たに立ち上げたCity Of Refugeにてレコーディングを開始する。

そして翌2008年には、1stアルバム『See You in Magic』をVagrantからリリース。Bo DiddleyやThe Byrds、Zombiesなどにもインスパイアされたという、これまで以上にクラシカルな要素を含んだロックンロールを展開している。

 

Night Marchers - Closed for Inventory

 

その後はリリース間隔が空くものの2013年には、よりソリッドになった2ndアルバム『Allez! Allez!』およびMrs MagicianとのスプリットEPをSwamiから発表。2021年には2ndアルバム作成時の未収録曲EP『Wot's Da Use / Dosed』に加え、中古レコード店から寄贈された廃棄レコードのスリーブを再利用し、1枚1枚ジャケットを手作りした2010年録音のライブLP『Live At Bar Pink』をいずれもSwamiからリリースしている。

ちなみに本ライブLPの発表に際してJohnは自身のFacebookに「RIP Night Marchers」と投稿しており、バンドとしてはこれが最後の作品になったようだ。

 

こうして別々の道を歩み出した二人だったが、興味深いのは両バンドの共通点である。ミニマルかつ空間を生かした音響のObits、マッシブかつジャングリーな演奏のNight Marchers。方法こそ異なるものの、いずれもサーフ・ロックやガレージ・パンク、パワー・ポップ、ロカビリーといったお互いのルーツへと回帰するようなサウンドを鳴らしており、彼らがいかに音楽的趣味を共有していたか分かるようになっている。

それゆえに両者が活動を別にするのはもはや不自然なことだったのだろう。またしてもJohnとRickはDown-stroke Warlordsとしてのパートナーシップを復活させるのである。

 

Night Marchers on Dirty Laundry TV

 

2011~2013年: Hot SnakesとRocket From The Cryptの再結成

それぞれがObitsとNight Marchersで活動していた2010年7月29日、地元サンディエゴのThe Casbahにて両バンドの共演が実現。アンコールではJohn、Rick、Jason、GarのHot Snakesオリジナル・ラインナップによる演奏が行われ、1stアルバムから「If Credit's What Matters I'll Take Credit」、「Automatic Midnight」、「No Hands」の3曲が披露される。

 

Hot Snakes 07/29/2010

 

すると翌2011年には、ニューヨークのオルタナティブ・アート・パンク・バンド、Les Savy Favのキュレーションにより、イギリスで開催されるAll Tomorrow's Parties「Nightmare Before Christmas 2011」への出演が決定。ついに正式な再結成が発表されたのである。

ドラムはJasonとMarioがスケジュールによってライブごとに、あるいは曲ごとに担当するダブル・ドラマー体制を採用。イベント出演を目前に控えた11月4日には全メンバーが集結し、Johnの経営するBar Pinkにて復活ライブを当日発表で開催。その後も各地でライブやフェスに出演し、継続的な活動を再開していくのであった。

 

Hot Snakes Reunion 11/04/2011

 

すると同年10月には、なんとRFTCも1日限りの復活を遂げる。Johnが「The Music Swami」というキャラクターに扮してレギュラー出演している子供向けテレビ番組『Yo Gabba Gabba!』に、往年ののメンバーが揃って登場。ドラムにはAtomが参加し、番組のために録音された楽曲「He's a Chef」(作曲は番組の音楽を手掛ける元The Aquabats、BikerideのAdam Deibert)のミュージック・ビデオが放送されたのだ。

 

RFTC - He's a Chef on Yo Gabba Gabba

 

あくまで本来は1曲限りの企画的な再結成であったそうだが、これにより復活への機運が高まり始める。

そして翌2012年12月、RFTCは継続的な活動の再開を正式に発表する。ドラムにはHot Snakesと同様、MarioとAtomがその時々で参加することが決定。翌2013年3月31日、キリストの復活を祝うイースターの夜に、Bar Pinkにて完全シークレットの再結成ライブが開催されたのであった。

 

RFTC - Easter Resurrection 2013

 

それを皮切りにMetallica主催のOrion Music + More Festivalやシカゴで開催されたRiot Fest、テキサスのFun Fun Fun Festなど、世界各地でライブを敢行。ここ日本でもFuji Rock Festival 2013およびJoin Alive 2013に出演し、苗場のWhite Stageでは同年に亡くなったBloodthirsty Butchers吉村氏への追悼も捧げられ、大雨と雷が轟く中ライブが披露された。

また、同年に行われたRFTCのUKツアーではBuzzcocksStatus Quo、Boomtown Ratsといった、各公演都市の出身アーティストをカバーした6枚のEPシリーズ『HITS! The Monkey Islands』を物販限定で販売。それぞれの会場ごとに収録曲が異なるという、もはやコレクターにとっては悪夢のような作品もリリースしている。

 

RFTC - Sturdy Wrist at Metallica's Orion Music + More Festival

 

2014年: Drive Like Jehuの再結成

そして2014年8月、地元サンディエゴに驚きのニュースがもたらされる。なんとDrive Like Jehuが、19年ぶりとなる再集結ライブの開催をアナウンスしたのだ。

会場はサンディエゴのバルボア・パーク内にある世界最大の屋外パイプ・オルガン施設、Spreckels Organ Pavilion。きっかけは同施設の関係者である友人から相談を受けたJohnが、オルガンとDLJのコラボレーションによる無料コンサートを提案したことだった。長らく演奏から離れていたMikeとMarkだったが、何度かの練習ですぐに勘を取り戻したそう。

 

8月31日のライブ当日は数千人もの観客が集まる中、会場の専属オルガニストであるCarol Williamsと共に往年の楽曲を演奏。ラストを飾る「Luau」では、当時の音源どおりゲスト・コーラスを務めたRob Crowも登場し、美しい夕明かりの中、シーンの立役者たちが再会を果たしたのだった。

 

DLJ with Dr. Carol Williams at Balboa Park 08/31/14

 

かつてバンドが自然消滅してしまったことについて、ドラムのMarkはずっと心残りを抱えていたようで、ライブではDLJの曲を披露することもあるHot Snakesに対しては複雑な思いもあったそうだ。そんな彼にとって再結成のステージは人生で最高の夜と言えるもので、ようやく心置きなくバンド活動を終えられるとその心境を語っている。

しかし当初は一度きりの演奏予定だったDLJ再集結の反響は大きく、高額の出演オファーが各地から舞い込むことに。メンバーはこれを受け、翌2015年には北米でのフェスを中心にパフォーマンスを披露することを決断。約20年の時を経て、完全復活を果たしたのである。

 

さらに翌2016年4月にはマンチェスターで3日間にわたって開催されるフェスティバル「All Tomorrow's Parties」のキュレーターおよびヘッドライナーを務めることも決定。バンドの選んだ豪華ラインナップも発表され、RFTCおよびHot Snakesのほか、WireやMission Of Burma、Flamin' Groovies、さらにはMartin RevやJohn Caleといったレジェンドたちも出演することがアナウンスされた。

しかしあろうことか、なんと直前になってATP Festivals自体の経営破綻が発覚。残念なことに開催の数日前に、イベントそのものがキャンセルされてしまうのであった……。

 

バンドはその後も各地でライブを披露していたが、同年8月をもって活動はひと段落。再結成に際しては新曲の制作なども検討されたそうだが、メンバー自身は現在進行形のバンドとまでは感じられなかったようでレコーディングまでは実現せず。結果的にはこれが最後の演奏となり、再び活動を休止している。

Drive Like Jehu - 8/28/2016 - Bunk Bar. Portland, Oregon - YouTube 

 

それでもなおJohnとRickのコンビネーションは健在だった。むしろここへ来て、その動きはさらに活発化していく。

しかしそんな彼らに、突然の別れが訪れるのである。

 

DLJ - Here Come The Rome Plows

 

 

→ JohnとRick 4: PlosivsとSwami And The Bed Of Nails

JohnとRick 2: Rocket From The CryptとDrive Like Jehu ←

 

 

参照:

Interview - ROCKET FROM THE CRYPT - Ausgabe #42 - Ox Fanzine

http://tonybrowndiprima13.blogspot.com

5-10-15-20: Converge's Kurt Ballou | Pitchfork

Swami John Reis | Fun Fun Fun indeed. Thx Austinians for another epic hang. Massive ups to Kurt Ballou @godcitymusic for giving me his guitar. Blown away!... | Instagram

Ben Moore - Production, tracking, & mixing - San Diego | SoundBetter

The Styletones | The Styletones

The Styletones | San Diego Reader

Cult & Culture Podcast Episode - Episode 22 feat Mario Rubalcaba

Conan Neutron’s Protonic Reversal - Ep170: Mario Rubalcaba

Interview with Drummer Mario Rubalcaba - Rum & Tattoo Blog - Sailor Jerry

Hot Snakes: Suicide Invoice Album Review | Pitchfork

No Reconciliation Necessary: Doug McCombs' Favourite LPs | The Quietus

This Mystic Decade | GTA Songs Wiki | Fandom

Rocket From The Crypt blast off again – San Diego Union-Tribune

Break-ups: Rocket From The Crypt (1990-2005) | Punknews.org

Rocket From The Crypt: Speedo's Army - Magnet Magazine

https://obitsurl.com/

#222 - Sohrab Habibion (Edsel, Kids for Cash, Obits, SAVAK) — Washed Up Emo

Shortstack – Free Dirt Records & Service Co.

Wild thing :: The Obits interview

https://www.linkedin.com/in/sohrabhabibion

an end of 2009 interview w/ Sohrab Habibion of Obits

Interview: Rick Froberg of Obits - Spectrum Culture

Record Review: Obits' Moody, Standard and Poor - ALARM

SWAMI SOUND SYSTEM - LiveOne - Music, Podcasts and more

San Diego Reader | Here's the Deal: Bar Pink

Marching, onwards: Speedo on rock 'n' roll past and present / In Depth // Drowned In Sound

John Reis Is Among Familiar Faces With His Latest Project, the Night Marchers – OC Weekly

John Reis starts Speedo with members of Hot Snakes, CPC Gangbangs | Punknews.org

Rocket From the Crypt Push Through Fierce, Top-Secret Reunion Show

Rocket from the Crypt | San Diego Reader

"So einen Sound gibt es doch heute nicht mehr"—Drive Like Jehu im Interview

Drive Like Jehu, an Organ, and the Classiest Reunion Ever

Ep. #217: Do You Compute - The Story of Drive Like Jehu - Kreative Kontrol

Interview - HOT SNAKES - Ausgabe #137 - Ox Fanzine

All Tomorrow's Parties' Drive Like Jehu-Curated Festival Cancelled | Pitchfork

The Strange Return of Drive Like Jehu

Hot Snakes: The return of the ‘down-stroke warlords’ – Chicago Tribune